【 野帳の補助線 -第135回の 八本目- 】 あちこちのキーパーさんとも『ゆく年来る年』
2018年 1月号 第135回 ヤニ喰い共の『ゆく年来る年』より...
―――― ありゃぁまさしく、苦労が磨いた珠だろうな。それにしても、うちの独活の大木も唐変木にも。うちの男共には、少しく苦労が足りんのと違うかな?
...で、聞いたが小っさなお姉さんもインフルにやられたってんだな』
はぃ~
『で、他の奴らは大丈夫なのか?』
◤ それなんですがぁ
『どうした?』
昨日の夕方から 副支配人さんの様子がおかしかったんで、大事をとって先ほど帰って貰いました。一晩様子を見て、駄目そうだったら 明日の土曜日は出てきてくれるなと お願いしてあります。まぁ、営業の方は 私が朝からこっちに詰める段取りで進めておりますし。とりあえずうちの連中は大丈夫ですから、ランチの方は、いざとなったら 昨日同様に姐ぇやを投入しますし。配車室には 兄ぃには明日は髭当たって髪の毛も櫛通して出社して貰っておいて、いざとなったらヘルプに入って貰おうと...
『おい、違うだろ ....げほげほげほほ』
へっ? ...大丈夫ですよ。あの人 マスター室の経験もありますし
『大丈夫じゃぁないだろ。小っさいお姉さんも唐変木も出社できない今。否が応でもお前が頭とって指揮せにゃぁならん時に、言うに事欠いて「うち」なんてぬかしやがっ…げほげほっ ゴホゴホゴホ …ぅえぇっへっへっ...』
―――― ったく、この調子で毎日電話での確認とお説教を欠かさない、暮れからインフルエンザでお休み中の『チョットコイ』の事務長のコジュッケさんでありますや
あのぉ、こちらは現員を遣り繰りして何とかしますんで、是非にも お気を沈めてお休み下さいまし...
「…おほっ、げへげへげへへへ… そうだな。お前と話をしてぇて 按配が悪くなる一方だ。じゃぁ 後はくれぐれも頼んだぞ」
それから、用事がありましたら 携帯電話の方にかけていただけると事務所まで来る手間が省けますが...
『どぉせ、松の内。おまけに俺もマムも 副支配人もいないからって 朝からお客と呑んだくれてるんだろ。少しは杯を休める時間を拵えてやってるんだ、少しは有り難く思わんか ...げほっごほっ ...切るぞ』
―――― やれやれ
...おぉ、随分と長電話だったじゃぁねぇか」
「いや、この人も、あぁたに長電話を咎められたくは無いと思いますよ」
―――― お昼時の №10ホールに面したテーブルには、件の高地のコースのキーパーのハイランダーさんと、濱沿いのコースのキーパーの シーサイドさん
「まぁ、座った座った」
う~ん、配車とか 洗い場は大丈夫かなぁ
「お嬢さん、キーパーも来たし。お酒と料理お願いね」
―――― 聞いちゃぁいないよ この人ぁ
「それにしても 正月五日の、この寒い日にしては 良くお客さん入っている方じゃぁないですか?」
◤ まぁまぁ お陰様で...
「なぁ、sibakuroンちの 九ホールのくせによぉ。うちより入ってンじゃぁねぇの?」
「まぁ、あぁたのトコは 寒すぎですよぉ。正直云って、営業している方が不思議だよ」
「本当にさぁ、うちは冷蔵庫どころか冷凍庫並みだからなぁ ...てかさぁ。寒いことは寒いでしょうがねぇんだけどさぁ。雪 降らねぇんだよなぁ。暮れのいつだっけ。バラバラッと来て 一瞬グリーンが白くなったくらいでさぁ
そぉいえば、そうかもしれませんねぇ、
「これさぁ、またやられるかも知ンねぇぞ。今年は『成人の日の呪い』が発動する年かもしんねぇ」
あぁ、ありそうですねぇ
「なんですか?その、『成人の日の呪い』ってのは?」
「晴れの特異日って有るじゃん?十月十日の体育の日」
「いや、体育の日はもぉ十月十日と限った話じゃぁ有りませんでしょう」
「そりゃぁ 馬鹿な官僚どもの浅知恵だ ...ってぇのは、また別のお噺でさぁ。『成人の日の呪い』ってぇのは、この日に大雪が降ったことが 過去何度有ったことか、思い出してみなよ」
「あぁ、そう云えば ...うちでも雪が積もったのって、成人の日の頃だったかなぁ ...そうだったような気もしますねぇ」
「だろ、今年あたり また来るかもしんねぇぞ。『成人の日の 呪いの大雪』がさぁ ...嫌だなぁ」
「雪慣れしたあぁたでも、雪の作業は嫌ですか?」
だってねぇ、除雪なんて やったからどうってぇ仕事でもありませんでしょう。それだったら颱風のあとのバンカーの世話なんかの方が、まだ『この際だから 随分と砂が落ちてしだらの無くなっていた“擦り付け”のところにきっちり砂上げて びしっとさせてやろう』とか、発展的な気持ちになれますでしょ。でも雪かきなんて...
「融雪剤に金使って、現場二人工送り出して。雪掻いて 解かしたってよぉ。なんにもコースが良くなるてぇモンじゃぁねぇだろ。下手すりゃ グリーンもティも そこもかしこも傷だらけにしちまって、まいた墨汁で 芝は迷彩柄になっちまって。で、無理矢理開けて ドンダケのお客が入って どんだけのアガリがあるんだかさぁ」
「あぁ ...確かにそうかもしれませんねぇ」
「ハウスの方もさぁ、一遍そのあたり算盤弾いてみてくれねぇかなぁ。現場に突っ込む 融雪剤だの燃料費だの 人件費だのと、それをやって金庫に入ってくる売り上げの足し引きとかさぁ ...あっ、済みませんね。この人 と俺とお酒追加で」
「かしこまりました。すぐにお持ちしますね」
「いやぁ、チーフに伝えてよ。この福島の地酒と“お正月のお奨め”本当に美味いしいってさぁ。それと、お昼時の忙しい時に済まないねぇ。キーパー座らせちゃってさぁ」
「ありがとうございます。お褒めいただけると シェフも喜びます。それと、キーパーは大丈夫ですから。むしろ キーパーには座っていてくれた方が 私たちも… でもキーパーは、飲み過ぎ注意ですよぉ。もぉ暮れからずっとなんですからぁ~」
―――― 足取りも軽やかにパントリーに向かう ちぃままさんでありましてぇ
「今の 新顔さん? ...配車室の補充で? ...良いスタッフとれたなぁ」
「でもまぁ、お客さんがコースでのプレーだけで無くて、あぁ云う気の効いたスタッフとの会話とか 和やかなハウスの雰囲気まで愉しみに来ているとしたら、雪かきにかかる諸諸の費用と その結果のアガリが見合わなくても。苦労する甲斐はあるのかも知れませんねぇ」
「うぅ~ん、そう云われちゃうとさぁ。うちはお高くとまっちゃってるってぇか、あんまりフレンドリーじゃぁないしなぁ...」
「うちもねぇ ...なんか名門意識が強いって云うか。変な意味でお客さん選んじゃったり、一見さんやビジターさん ビギナーさんに冷たかったりねぇ...」
「そこに居ない人の悪口で盛り上がったりして、アイツら仲が良いんだか悪いんだか...」
「そのくせ 何か新しい提案があると、一致団結して『デキマセン』だし...」
「出る杭は全力でタタキにかかるし...」
―――― やれやれ 皆さん苦労が絶えないようですが
『しーさん マムからお電話入ってますヨォ。「どうせ朝からお客さんと呑んでるだろうから、少しグラスから手を放すように事務所の固定電話にかけた」って』
―――― やれやれ..
「なんだよ、また長電話か?手早く頼むよ。この春の前に合宿やらねぇとだ。その相談もしねぇとだからな」
―――― おいおい.
A Golf Courase Maintenance Fable
Another Time Another Course
...From His Field Note 2018_01_05
そを人は 虚実の皮肉と云ふさうな...