From His Field Note : グリーンキーパーの野帳から

一季出版(株)発行 月刊ゴルフマネジメント誌連載中の –グリーンキーパー の野帳– のスピンオフと申しましょうか 補助線と称してあれこれと...

【 第136回の補助線 九本目 】 クローズでも“そう云う稼業の人”は集えよ このコースに...

2018年 2月号 第136回 皆集えよ あの旗の下に より...

 ―――― こう云う話をすると、せせら笑う人たちもいるけど。しーさんは違うと思うんだ。旗を掲げることの大切さとか、その旗のもとに集うことのできる素晴らしさ。解ってくれてるんだよね、しーさん...

 


 

・・・いやぁ、雪 止んだッすねぇ。あっ 見て下さいよ、間雲に青空が見えますよ」
 ―――― それを云うなら“雲間”だからね。もっとも今のは只の誤用で“間雲”って雅な言葉がちゃんとあるんだそうですけれどもねぇ*1
「いやぁ、今から動散動力散布機出します?融雪剤撒いてきましょうか?」

◤ いやいや まだまだ判らないからねぇ...

 撒くのはやっぱり明日だろうねぇ、
「やっぱり明日ですかぁ、いやぁ 残念だぁなんて言わねぇっす。よぉし、明日はもっと頑張るぞぉ~」
 お前ぃさん『明日本気出す』は良いけど、今日の仕事をしくじらないでおくれよ。同じ段取り 同んなじ場所で、毎年毎年の出かけたたんび、、、、、、、なんだからさ、
「ダイジョウブダイジョウブゥ~。じゃぁキーパー、もぉ一周行ってきますねぇ ...ぅひゃっほぉ~」
 ―――― そろそろ雪降りの雲のお仕事も手仕舞いでしょうか。浮かれたボクちゃんの出かけて行ったプラクティスグリーンであります。昨夜来の雪でコースはまた真っ白でありますが まぁ、覚悟していたほどの降りでは無し。まだ雪の止まない朝一番から、ボクちゃんが軽トラックに乗って、カート道、作業道 駐車場 進入路を走り回っております。荷台から伸びた虎ロープの先には、№五番ホールで伐採した木から切って持ってきた、葉っぱの多い大枝を束ねたのを括り付けてあります。そうして 新雪のうちに掻き回してやると随分と融ける塩梅が違いますし、後で引っ掻いて除雪したりする手間も省けますし ...そもそも そんな手間もかけられる程の人手もありませんしねぇ

『そぉいえば キーパー、もぉグルグル二周くらいはしてますけど、まだ走ります?』
 ―――― 脳天気な無線は、今し方出かけたばかりのボクちゃんから...
 大方様子が良さそうだったら、後は進入路のS字とか 八番のグリーン裏とかの 日陰の融けにくいところとかの急所を重点的に頼むよ ...今日は つっぺったって、、、、、、、すぐに助けに行ってくれる 兄ぃも姐ぇやも居ないんだから、くれぐれも気を付けるんだよ』
『りょぉ~かいですぅ~』
 ―――― ボクの字、本当に大丈夫か?姐ぇやが急なお弔いができてしまって今日明日のお休みとなってしまいまして。今日出社 明日公休だった兄ぃに、急遽 今日休み 明日出社のシフトの変更をお願いして、今日の出社はあたしとボクちゃんの二人きり。ハウスの方は 電話番にフロントの嬢が出社しているだけで、他はみんなお休みでありますれば...
『ぉお~ぃ、ちょっとこぉ~い』
 ―――― あれ?

 

雪の明日の 朝焼けかな...

『それにしても寒すぎるだろ』『寒いけど綺麗じゃね』『それって カレー味の...』『やめんかぃ この罰当たりぃ』

 

「なんだ、積雪クローズだってのに 今日も出社か?グリーンキーパーってのは つくづくとご苦労な商売だな」

 ―――― 労ってくれているんだか 呆れているんだか、それとも 滅多に口にしない冗談のつもりなのやら ...銀縁の眼鏡のつる、、に指を添えて、その縁の上から上目遣いのコジュッケの小父さん。このコースだけではなく、インターの脇のレストランの経営やら営業に関わるあれこれ、、、、の数字が そっくり頭に入っていて、即座に取り出せるという。恐るべきインテリジェンスでありますがぁ...

◤ そぉおっしゃる 事務長さんこそ...

「俺か?俺には クローズも何も関係ない。営業してりゃ してぇるなり。クローズしたなら してぇるなり ...要するに そぉ云う商売だってぇだけのことでな ...それよりだ。あの唐変木副支配人の 例のモーテルへの異動を少し早めにしようかと思っとる」
 はぁ ...てぇか、何故 今それをあたしに仰るんで?
「ついでにだ。ここコースに来る筈だった 支配人な。来ないことになった」
 はぁ? ってぇかぁ、なにゆえ、、、、でしょう?
「モーテルに支配人として 着くことになった。ゴルフ場とレストランと モーテルとな、それぞれの副支配人と人の配置を改めて検討してみたが。小さいお姉さんマムが総支配人兼 支配人で、あの唐変木副支配人が副支配人だと、小さいお姉さんマムがモーテルに拘わされる時間がな。どぉにも馬鹿にならない比重になりそうだからな。“女王”は支配人としてモーテルに廻して 小さいお姉さんマムとの間に一枚はさむことにした」
 そは コースも一緒。独活の大木あたしの副支配人だって 当てになりゃぁしませんでしょぉ ...ぃやぁ 敏腕の“氷壁”の支配人の着任を愉しみにしてぇたんですけんどもねぇ」
「与太事は聞きたくない。ここコースには ちぃ子ちぃままが居るだろ。アレが居れば 何とかなるだろうってか、アレとお前とで何とかしてみせろ。実際は ...いや これはここだけの話だがな、俺はこう見えて親切だから 聞かせておいてやる。レストランの副支配人からも 唐変木副支配人からも『ちぃままをウチにくれないか?』って 内内の打診があってな。それで検討しなおした次第なんだがなぁ ...特にレストランの副支配人からは ちぃ子ちぃままの他に『寡婦のシェフや お嬢も欲しい』ってな。ところが ...ここからは本当に内証の話だ。今度は俺から 三人に それとなくかま、、ぁかけてみたんだが、ちぃ子ちぃままも シェフもお嬢も『ここコースに居たい』ってことだったんでな ...おぃ、お前も大層な果報者だなぁ」
 ―――― あれ?今 小父コジュッケさん、笑っておられました?
「まぁ独活の大木sibakuroがウカウカしてたら、大事な手駒をかっ剥がれるから、覚悟を決めとけ。話はそこまでだ。何時までもそこにいられると...
『きぃ~ぱーぁ~、すんませぇ~ん。八番のグリーン裏で 藪に突っ通し、、、、 』ちゃいましたぁ~ ...きーぱー へるぷぅ~』
 ―――― って 情けない無線はボクちゃんから ...やれやれ、疾うにぬることにいたしましょう...

 


A Golf Courase Maintenance Fable
Another Time Another Course
...From His Field Note 2018_02_02 / It has stopped snowing

そを人は 虚実の皮肉嘘と真の綱渡りと云ふさうな...

*1:閑雲 ...静かに浮かんでいる雲。閑雲孤鶴 閑雲野鶴 など...