From His Field Note : グリーンキーパーの野帳から

一季出版(株)発行 月刊ゴルフマネジメント誌連載中の –グリーンキーパー の野帳– のスピンオフと申しましょうか 補助線と称してあれこれと...

【 野帳の補助線 -第135回の 七本目- 】 春永の感冒騒ぎも『ゆく年来る年』

2018年 1月号 第135回 ヤニ喰い共の『ゆく年来る年』より...

 ―――― ありゃぁまさしく、苦労が磨いた珠だろうな。それにしても、うちの独活の大木sibakuro唐変木副支配人にも。うちの男共には、少しく苦労が足りんのと違うかな?
 

『しーさん、姉様からお電話ですよぉ~』
 はいはい、すぐに行きますよぉ...
 ―――― って、姉様の電話って どこの国からで、時差は何時間なのやら

◤ はいはい、お待たせを ... そちらのお国でも あけましておめでとう存じます?

...はぃ~ 洗い場の小母ちゃんに続いて 事務長コジュッケさんが暮れにやられまして。昨日 女将マムもダウンしました ...はい。まぁ今のところそれらしい症状を訴えているのは他に居りませんで ...はい。とりあえずは三が日は無事に越すこともできましたし。今度の土日には、小母ちゃんも復帰できるでしょうし。今日は 急遽姐ぇやもホールレストランのヘルプに入れて なんとかまわしておりますんで ...はい、はいはい、ではでは。引き続きの御旅のご無事をぉ」
『しーさん、ホールに理詰めさんがお越しですぅ』
 ―――― なんだとぉ?

...どうも お待たせを。ぁいゃ あけましておめでとう存じます。今年も相変わらずのご指導とご鞭撻をを戴けますよう お願いを申し上げます、
「忙しいようだが、まぁ座れ。改めておめでとう。今年も 精進されるよう願っている」
 ―――― うーん、やっぱり硬い人だなぁ。目の前のぎょろ目の小父さんは、かつてあたしの師匠の総べて居られたコースの 総支配人と管理部長も兼任しておられる 兄弟子の一人。理詰めの叔父御であります
「マムと姉様にご挨拶を差し上げようかと思ったんだが、お二人とも出張中か」
 はぃ~ 姉様はクリスマスから年明けは恒例の 外国のお友達とのご交流の旅の真っ最中なんですが、女将マムはねぇ ...ここだけの話。インフルエンザで今日から一週間は出社停止とあいなりましてぇ。罹患したのが 暮れから女将で三人目なんですよぉ、
「ふむ。少人数で高い機動力を活かして廻している会社だ。そう云う時にはピンチになるが。そこが『タダのキーパーで終わってほしくない sibakuroさん』の腕の見せ所だな」
 ―――― もしかして、さっきの姉様からの電話、聞いておられました?
「で、お前。酒臭いな」
 はぁ、面目次第もありません。松の内は 朝から夕方までお馴染みさんとのお屠蘇続きでしてねぇ、
「お前に面目なんてものがあるのかどうかは知らん。だがまぁ それがこのコースでのお前の営業スタイルというのならな。異論を鋏むつもりも無い。だが しかしだ。ハウスにかまけてコースを疎かにする様なことの無いようにな。お前はあくまでグリーンキーパーだと云うことを忘れるな。それとだ...」

◤ まだありますかぁ?

「来期の予算や指針書ができたら メールで良いから送ってくれ。ウチの若いキーパーに読ませて 考える縁にさせてやりたいと思ってな」
 考える縁だなんて、なんか面映ゆいですねぇ、
「誰も 今期のモノよりは良いモノができているだろうなんて言ってない。あくまで“考える縁”だ。反面教師、他山の石もって玉をおさむべし ...と云う諺もある」
 すりゃ 恐れ入りまして... で 今日の御用向きはその件で?
「いや、今日は飯を喰いに来た。ここのチーフの正月の特別メニューにも興味があるしな。しかし、正月も四日で お客の入りも一段落かと思っていたが、そこそこの入りのようだな。なによりだ」
 お陰様でねぇ。お天気も続いておりますんで、ありがたい限りです、
「ちょうど飯の時間だが、付き合う暇はあるか?」
 ―――― それは 付き合えと仰っているんですね
「お嬢さん、私にお代わりと キーパーにも同じものを。それと チーフのお奨めを見繕って お願いします」
 すりゃ ごち、、になって ...ってぇか、さっきから結構な勢いで呑んでおられますけど 宜しいんで?
「さっき うちの料理長とキーパーがコースにでたところだ。上がってきたら紹介しよう。帰りのハンドルは 負けた方に握らせるから大丈夫だ。」
 ―――― おぉ~い
「で、今年の春にはグリーンの新設工事と聞いてるが?」
 はぃ~ 五番のパッティンググリーンが 三十ヤードくらい後びっ去りあとびさりしましてね。その他にも レディースティの新設や改修なんかも何ホールか、
「ふむ、なかなか充実した仕事をしているようだな」
 お陰様であっちもこっちも、、、、、、、、でしてねぇ、
「お客さんに酒を奢って貰っている時間をもう少し何とかすれば、キーパーの仕事をする時間も稼げるだろ」
「お待たせしました。こちらのお酒はシェフからのお試し。福島の、シェフのお母様の実家筋の 小さな蔵の 無名の地酒ですが。あの3.11の地震からの立て直しで ずっとずっと頑張って来て、去年の秋にやっと出荷できるまでになった 自慢の辛口です。この後すぐにお持ちする“松の内のお奨め”にもピッタリのマリアージュです。是非 併せてお試しいただいて、ご感想をお聞かせ下さい ...しーさんは 飲み過ぎないようにねっ」
 はぃ~
 ―――― って、給仕する姿も 蒲鉾みたいに板についている姐ぇやでありますが、ちら、、と睨んでいったその目のおっかないことぉ~
「うむ。これは良い酒だ。これなら“お奨め”も楽しみだな ...それに 今のウエイトレスの口上も良い。見ない顔だったが 新規採用か?」
 いえいえ、普段はうちコース課の現場なんですが、今日は人が足らないんで 臨時のヘルプでんす、
「なるほど いいな、そう云う機動的な対応ができるのは」
 まぁ、本人は『客あしらいはもう懲り懲り』って コースに来たんですけれどもねぇ...ってか、昔は コースの草むしりの小母ちゃんが 手が足りない時にはキャディをやっていたりもしましたでしょ、
「そう云えばなぁ ...しかし古い話だ。まだ 強面や辛口や、兄ぃなんかとわぁわぁ、、、、と賑やかに親爺の下で駆けずり回っていた頃の話だな。昭和も遠くなりにけり ...って奴か?」
『姐ぇや、しーさんのテーブルのお奨め もぉ直上がるって』
『了解ぁ~ぃ。アタシ行くから、ちぃ子ちぃまま七番さんお願ぁ~い』
「あれも見ない顔だ」
 ありゃぁ この秋に採用した ...一応は配車室の退職の補充なんですけど。これがとんでもない大当たりで、あっという間に 縦横無尽になっちゃいましたですねぇ、
「まったくここは女の城だな。まぁ それも悪くは無い。まぁ 呑め。それにしても 良い正月だな...

A Golf Courase Maintenance Fable
Another Time Another Course
...From His Field Note 2018_01_04

そを人は 虚実の皮肉嘘と真の綱渡りと云ふさうな...