From His Field Note : グリーンキーパーの野帳から

一季出版(株)発行 月刊ゴルフマネジメント誌連載中の –グリーンキーパー の野帳– のスピンオフと申しましょうか 補助線と称してあれこれと...

【 野帳の補助線 -第135回の 六本目- 】 お屠蘇の勢いも『ゆく年来る年』

2018年 1月号 第135回 ヤニ喰い共の『ゆく年来る年』より...

 ―――― お前も『単なる芝職人で終わらない』キーパーなら、ちゃんとやってみせてくれれば良いだけの話だ…無駄口は要らん。それからだ。この間の『グリーンキーパーってのは、何を管理しているのか解っているのか?』って宿題。まだ提出がないぞ?
 

『しーさん、ツルトロさんと くらちゃんさんが上がってお出でです』
 はいはい、すぐにお伺いいたしましょ...
 ―――― って、正月 二日のホールレストランにお伺い

◤ あけましておめでとう存じます

「おっ、キーパー おめでとう。今年もヨロシク
「しーさん おめでとう、今年もよろしくお願いしますよ」
 いえいえ こちらこそ昨年に増してのご贔屓様をお願いいたしましてぇ... スタッフにお年玉もいただいたそうで、ありがとうございます
「お嬢、しーさんにハイボール。ウンと濃い目の奴お願い ...まぁまぁ、座ってよ しーさぁん」
「...って、いつからお前『しーさん』になったのよ」
「へっへっへっ、いつの間にか『俺としーさんの仲』になっちゃったんですよねぇ」
 ―――― 年明け早早に 嫌なフレーズ聞いちゃったぃ
「 ...いやぁ、それにしても良いお正月だね キーパー」
「本当、ここ暫く穏やかなお天気で 最高だよね」
 で、お二人とも お正月早早のお越しは有り難いんですがぁ ...ホームのコースさんから叱られませんかぁ?
「何言ってンのキーパー。俺りゃぁ とっくにここがホームだってば。本当は昨日来て一番の挨拶をしたかったんだけど、ちょっとややこしい付き合いもあって 仕方なくさぁ」
「そうそう、おれもツルツルトロさんに頼んで、今度ここのメンバーになるからさぁ。あちこち義理のあるコースもあるけど、おれの中じゃぁ 今年からここがホームだからね、しーさん」
 ―――― すりゃぁ ありがたいお話しではありますけれどもぉ
「それにしても、しーさん。いつ来てもコースのどこかに居るよねぇ。うちの ...いや、おれが通ってたコースのキーパーなんか『休みは休みですから』って、台風が来たって雪が降ったって『休みは休みですから』なんだぜ」
 まぁ、平成の御代の幕引きの段取りも始まってはおられますけれどもねぇ。あたしみたいな 昭和のキーパーの生き残りは、お天道様のお出ましと お引き取り。この身でもって拝んでの暮らしをいただいて居りませんと、どうにも ねぇ...
「働き方改革とか、一向無縁な商売って云いたいの? しーさん」
「なに言ってンだよぉ。この人は 幾つものコースでキーパーやってきたけど、ドコでもそうなんだよ。コースに棲み着いちゃうんだ。マグロだかカツオだか、泳いでいないと死んじゃうみたいに、この人 コースの空気を吸ってないと死んじゃうんだ」

◤ あのですねぇ~

「要するに、この人は 仕事でやってるんじゃぁなくって。コースに居ることが 暮らしの一部なんだよ。後は 酒呑んで酔っ払って寝てられたらそれでハッピーなんだから」
 ―――― それもまた 随分な申し様じゃぁねぇか
「あっ、ツルトロさん くらちゃんサン。あけましておめでとうございますぅ。今年もご贔屓様にお願いします」
「おっ、ちぃちゃん。今年もヨロシク」
「どぉ?このコースは ちぃちゃん。しーさんのセクハラとか大丈夫?」
 ―――― おい ちょと待て
「あはっ、全っ然 ダイジョォ~ブですよぉ。むしろ もっと積極的に迫ってきて欲しいくらいですぅ♡」
 ―――― おいっ、ちょ と ま て
「いやぁ、ちぃちゃんも愉しそうだねぇ。なんかさぁ。去年くらいからかなぁ。ここのコースのスタッフの顔つきがさぁ。変わってきてるんだよね」
「それ、やっぱアレですか?マムとか姉様の薫陶よろしき?確かに あの二人のカリスマ半端無いですしねぇ。いやぁ、このコース もっと良くなりそうだ。ちぃちゃんも良いコースに巡り会えたよなぁ ...済みませんね、ちょっと 用足し...]
「大丈夫か あいつくらちゃんさん?お屠蘇で酔っ払っちゃってないか? ...ってぇか、キーパー。マムや姉様のカリスマもあるけどさぁ。キーパーも頑張ってるよね。ちぃちゃんもだけど、キーパーも良いコースに棲み着くことができたンじゃないの?」
 まぁ、お陰様でてぇましょうかぁ...
「俺もさぁ、お屠蘇の勢いで言っちゃうけど。俺、お前さんのこと応援してんだよ、誰よりもさぁ。俺と お前さんで、このコースを『良きゴルファーの集う 良き倶楽部』にしてきたいんだよ。可笑しいだろ、新年早早に 青臭くってさぁ」
 それを仰るなら、あたしもいただいたお屠蘇濃い目のハイボールの勢いで申しますけれども。仰ることに 毫末の異存もございません。あたしもね、このコースを『みなさんのThird Place』にできるようにと念じております。それが あたしの『良きゴルファーの集う 良き倶楽部』のイメージなんです、
「随分と長いこと 御前さんと付き合ってきたけど ...初めて 御前さんの本気の本音を聞かせて貰った様な気がするなぁ」
 まぁ、一陽来復ってんですか?あたしも随分と長いこと 暗がりを彷徨ってきましたけれどもね。お陰様で、ようやっと、、、、、に そればかりのことを口にできる様になりました... 「それを聞かせて貰えただけで、良い正月だよ、キーパー」
 あぁでも 他のどなたかのお耳に届いて もぅうすらこっ恥ずかしいばかりのお話しです。ここだけの話ってぇ奴で、是非にもお忘れ下さいまし、
「忘れるモンかよ。一緒に 良い倶楽部にしようよ キーパー」
「あぁ、さっぱりした。さぁて そろそろ午後のラウンドだけど ...?なんか おれの居ない間に二人で盛り上がってました?」
「あははは、お屠蘇の勢いで 与太話をしてぇただけさぁ...

◤ A Golf Courase Maintenance Fable
Another Time Another Course
...From His Field Note 2018_01_02