【 第136回の補助線 一本目 】 面倒臭ぇひとどもも 集えよ ...このコースに?
2018年 2月号 第136回 皆集えよ あの旗の下により...
―――― そうよ。頭の中で『良きゴルファーとは』『良き倶楽部とは』って、漠然とイメージしているよりもね。言の葉にして書きだしてみるの。自分にとっての、自分がサービスしたい。サービスすることで自分もハッピーになることができる『良きゴルファー』とは。自分がサービスする場としての、サービスすることで自分も愉しくなれる『良き倶楽部』とは。このコースのスタッフの一人一人が、そうして自らの言の葉を紡ぎ続けることで、いずれ言霊が宿る。言霊が宿れば、いずれそれは具現する…なんて。まるきり自己啓発本まがいだけど......
...本当にさぁ、朝ッから あの人にとっ捕まっちゃいましたよぉ』
―――― あたしゃぁ そう仰るあぁたにとっ捕まっちゃってんですよぉ
『本当に あの人の長電話ったらさぁ…
◤ どの舌がそれを吐くかぁ...
―――― たまに ざあっと落ちてくるんですが、でも ここしばらくの寒さもやうやうに緩んでくれた雨の水曜日。今日こそは午前中で帰らして貰おうと思っておりましたが、早速にシーサイドさんの長電話に捕まっては、業務が停滞しておりますですぅ
『ったくさぁ。大将ンとこも雨だそうですけど、雨なら雨で「この時期に雨なんておかしい。コレはきっと二月か三月 ...もしかしたら櫻の候にドカンとやられるかも知れない」って 大騒ぎしてんですよ。あすこなんか 櫻が散るまで いつドカンドカンやられたっておかしかぁない定めの極寒コースなんだからぁ、いい加減に往生してくれりゃいいんですよ』
―――― すりゃ 酷い仰りようじゃぁありませんか
『それから、例の312のおっちゃんの 例の“ニョロニョロの写真”の件もさぁ....
...ノート君が漏らしたりするからあっちゃんが勉強会を また嗅ぎ回り始めちまった」とか、本当に面倒臭いったらさぁ。だいたい あの写真だって、普段からやたらに寒いコースで この間の寒気に晒されてさらに冷え込んだ夜 ...もしかしたら夕方からかも ですけど。給水管が爆ぜて吹いて飛沫になった水が凍って、鍾乳洞の石筍みたいに育っちゃった...
...大方 その程度のことでしょうよ。まぁ 程度の多寡ってぇのにも程があるんですけどね。大将も あぁたも、それと知っていて 大騒ぎして遊んでるだけでしょうに』
―――― やれやれ、流石に大将さん評するところの“芝生のサトウマサル” は冷静な分析だこと
『まぁ いいや。私があんまし長電話してると、高いところの人から「何時まで電話してるんだ」って あぁたが怒られちゃいますからねぇ ...ひっひっひ。この電話切ったら 即鳴りですよ きっと…
―――― やれやれ
...ったくさぁ」
―――― やれやれ 今度はこの人に引っ掛かっちまった。これじゃぁまるで 上げ潮ん刻に水面を漂ってぇる そこいらのごみと一緒じゃぁねぇかょ
◤ 相済みませんが ご用件は手短に願いますよ
「なんだよ キーパー。つれないなぁ。オレが異動だから?」
―――― その恨めしげな目つきはなんだ ...ってな、この春に副支配人としてインターの脇のモーテルに異動の内示を受けた 副支配人でありますが …ぁぃゃ、話がややこしくって恐縮至極です
「良いなぁ、キーパーはさぁ。コースには噂の敏腕支配人着任で、おまけにちぃさまみたいな 良い右腕が着いての副支配人で ...だろ。その点オレなんか、マムが総支配人兼任の支配人の下で、ホテルのスタッフにおイチ一からの、全部拵え直しだぜ ...あっ、そうだ 副支配人。ちぃまま、オレにくんない?」
―――― えぇと、まだここだけの話ではありますが。同じ席で あたしは、この春からここの副支配人就任の内示をいただいておりますけれど、それはまた別のお噺...
ってか『ちぃさま』とか『オレにくんない?』とかって、あぁた。ちぃまま来るまでは『何処の馬の骨とも判らない』とか云ってませんでした?
「何言ってるんだよ キーパー。曰く『君子はその言を翻すに躊躇うことなかれ』だよぉ
寡聞にして そのような格言、存じません。勉強不足のこの身をお詫びいたします、
―――― ってか、我からを“君子”とおっしゃるか
「コースのスタッフも良いのを揃えて ...姐ぇやも居るし、ハウスの方には ちぃさまに お嬢に シェフだろ。今度着任の支配人も 良い按配の年増だってぇじゃぁない。もぉ、キ~パァ~。ハーレムってか 大奥ってか、悦び組ってぇか。副支配人、ご艶福でなによりだねぇ」
―――― なんかぁ この人も面倒臭ぇなぁ
「それはそれとして、あれさぁ。月例会とか 対抗戦の事務局さん、大丈夫なの?」
...ってのはなんでです?
「だってさぁ、居酒屋のマスター主催で ヤニっ喰いのモクモク会さん立ち上げでしょ。それって、事務局さんの分裂とか、分派じゃぁないの?最近 ツルトロさんも くらちゃんさんとか 余所のコースのメンバーさんとのラウンドがやたらに多いじゃぁない?」
―――― なんだってまた 面倒臭ぇ話を穿り返してくれるじゃぁねぇか
「大丈夫なのかね、あれ?」
すりゃねぇ。離合集散 有為転変は人の世の倣いですから。政治 経済 教育 スポーツから、宗教 ソーシャルのグループまで。およそ人が集って騒ぎ始めた時が、散ずる刻の始まりなんですよ。その逐一に右顧左眄させられちゃぁおられませんです、
「本当にキーパー、冷たい分析だねぇ ...冷たいってぇば,今度ヘッドハントされてここに来る支配人。前の職場じゃぁ“氷壁”とか“女王”って渾名されてるらしいよ。副支配人、頑張らないとだよね」
―――― やれやれ
『...おぉ、なんだよ。お昼前は随分と長電話してぇたじゃぁねぇの...』
―――― やれやれ 面倒臭い人が言ったと思ったら 今度は面倒臭い大将からの電話でありますや。この分だと今日もまた帰らせて貰えそうにありません......
A Golf Courase Maintenance Fable
Another Time Another Course
...From His Field Note 2018_01_17
そを人は 虚実の皮肉と云ふさうな...