【 野帳の補助線 -第135回の 十一本目- 】 寒さに凍えながら あれだこれだの『ゆく年来る年』
2018年 1月号 第135回 ヤニ喰い共の『ゆく年来る年』より...
―――― まぁ今までもさぁ。ハウスでも指定場所以外は禁煙だったけどさぁ。ついに全面禁煙だもんなぁ」
「でも、最近の流れかもしれないけどさぁ。ゴルフ場でもゼンメンってアリ?最近割引とか飯付きのプランも無いし、かえって売り上げ落としちゃうンじゃぁないの」
「酒タバコとニギリって、ゴルフの三大ダンディズムじゃぁないの?」
...あっ、今 おれのことぉ、邪魔に思ったろ」
そんなことぉ 思っちゃぁおりませんですよ、
「思った、いや絶対におれのこと邪魔に思ってた」
◤ はいはい、思ってましたよぉ
「ほら見ろ、図星だったんだな。遠路はるばる来てやった仲間に対して、ソレは無ぇンじゃぁねぇのぉ?しーさんてば 芝生の冷血漢?」
どんなに大きな間違いを犯したとしても、あぁたにしーさん呼ばれたくないわ、
「だって あのカウンターの、ちぃままサン?早速『しーさん』なんて呼ばせてんだろ。今日は金髪のツンデレちゃはお休み?ツンデレちゃんの居ないことを良いことに、この 色魔」
大概にしなさいってば・・・
「それにしてもヨォ、この間の雨さぁ。マヂで助かったヨォ」
―――― まだ時分時には少しく間のある頃合いのレストラン。いかにも美味そうに 大ジョッキのビールを飲み干すハイランダーさんでありますがぁ
「…なんだよ お前さんも呑んでくれよぉ。なんだっておればっかし煽ってぇたら 風が悪いじゃぁねぇのぉ ...でな。なんせ、五十ミリもっとの降水量だったろ。あれが雪だったらって思うと 本当にぞっとするわ」
その分 冷え込みがきつくってねぇ。うちでもパッティンググリーンもティインググラウンドもかちこちですよ、
「あれ、ティーマーカーとか お客さんのティペグとか刺さってる?」
まぁ ティペグなんかは、ティボーラーなんかで 何とかなっていますけど。ティマーカーは ...冬の間だけ刺さないで良い、置くだけのやんにしようかてぇ思っちゃうくらい ...あぁたのところなんかは それどころじゃぁありませんでしょ?
「まぁ うちの連中はね。冬のカップ切りの時に ぎっくり腰やらかした病歴が 一人前の第一歩みたいなもんだしなぁ。あれ、ティなんかはさ。タコティっての?あの置くタイプのをフロントで配ったりもしてぇるけどさ。毎朝のシート剥ぎの時に ドリルで五・六カ所揉んでやって、マーカーでチョチョッと印してやっておいてんだ」
ほぉ ...でも、ティペグなんて ポキポキ折れちゃいません?
「そこはまぁ、お客さんも無理矢理折れたティの横に捩じ込んだりね。タフなもんだよ」
わはは、お客さんが『刺さんねぇ』とか喚きながら、いじましくねじねじしてぇる様が目に浮かびますねぇ ...どうせなら ラヂペンでも配置して、折れて残った先っちょを摘まんで抜けるようにしてみたらどうです?
「いや、そのアイディアは もぉウチの若い衆からも出てきたから やってみたんだけどさぁ。ギッて持ってかれちゃうのは想定の範囲内だから、ティボーラーに 細いワイヤーで括り付けておいたんだけどな。トンマなお客からの『意味がわかんない』とか、実際『霜が凍り付いちゃって 使えない』とか『握ったら冷たい』とか、クレームばっかりでうんざりしてぇるトコさぁ」
―――― あれまぁ
「それよか ...だなぁ」
◤ まだ 寒さネタありますか?
「御前ぇさん電動工具とか買うなら “ホムセンもの”は ダメだぞ」
はぁ?今更なんでです?
「ホムセンの安いのはさぁ、いくら“プロ用”を謳ってぇても 所詮は“ホムセンもの”だ。本気で凍ったティには刃向かえないし、第一寒すぎて バッテリーが働かなくなっちまう」
すりゃ スキー場なんかで スマホが使えなくなるようなもんですか?
「ソレだソレだ」
放送の現場なんかだと、人間は凍え死にしそうになっても 機材に使い捨てカイロを貼り付けてバッテリーを保護してぇるって聞いたことがありますけれど、
「それだそれ。なんせ寒すぎるから、なまかぁが まともに働ける環境じゃぁねぇんだ。おれンちでも カイロだよカイロ。ちゃんとした金物屋で買ってきたメーカーもののドリルや 穴揉んだ後の目印のスプレー缶にも、メーカーものの使い捨てカイロをベタベタ貼り付けてな ...ただ 現場から『仕事がしづらい』って声が有ってさぁ。今度は 発泡スチロールの箱に、カイロとドリルとスプレー缶を放り込んでって作戦だわ。まぁ、こうしてさぁ。ろくに売り上げも無ぇのに、地味に経費が嵩んでぇくんだけどなぁ」
すりゃ 頭の痛い問題ですねぇ...
「おぉ、寒すぎて頭が痛くなるくらい ...知ってッか?ロシアなんかの あの毛皮のモフモフした帽子。あれさぁ、あのくらいのモノぉ被ってねぇと、頭の血管切れちゃうんだってな、寒さで。なにはとまれ、うちの連中なんかに防寒グッズを語らせたら そんじょそこらのお宅にゃぁ負けねぇだけの知識と経験と 出費があるぜ」
―――― それって自慢になるのかいな
「そういやさ」
―――― まぁだ あるんかぃなぁ
「うちのサブ。アイツが今朝『ここ二三日 始動する時、バッテリーの様子が怪しかったんだけど、今朝になったらセルは廻っても エンジン飛び込んでくれないんですよぉ』って電話して来てさぁ。寒さで トドメさされちゃったみたいなんだよ。まぁ アイツも熱心な奴だから 出社は夜明け前、退社も夕暮れのトボトボ時 ...一年日がさら いつでもライト着けて暖房や冷房全開だろ。バッテリーに負担もかかるわなぁ。アイツ、若いころは相当に鳴らした走り屋だったみたいだけど、今はもぉすっかり丸ぁるくなっちゃって『車なんか 無難に走ってくれれば良いんです』なんて言ってたのによぉ。今では 走行十五万キロ超の 腐れた軽だろ。自業自得さえ。んで、野中の一軒家の 親の実家の独り住まいで、助けを求められるご近所さんも無し ってぇか、そもそも そんな時間じゃぁねぇし。JAFに電話しても『回線が混雑していて』全然繋がんねぇ ...で、おれは今日休みのつもりで 昨日のうちに段取り打ち合わせておいたんだけどさぁ。しょうがねぇ、朝廻りと朝の会やりに顔出してさ。夜明けを待って馴染みの車屋に電話してたたき起こして バッテリー交換して出社してきたアイツと交代してきたってぇ、今朝のちょっとした小芝居だったわけだ」
すりゃぁ、サブさんもご愁傷様でしたがぁ...
「アレだって。今、北陸とか 日本海側の大雪のアオリで、全国のJAFの電話 全然繋がらなくなっちゃってるって話らしいぜぇ」
―――― なんとまぁ...
「それからなぁ...」
まぁだ ありますかぁ?
「これ、この写真だ」
なんだこりゃぁ?
「な、面白れぇだろ?」
こりゃぁ なんなんだぁ? ...あぁ? もしかして、また312のおやじのたれこみですか?
「ご明察だけど ...まぁこの話は また改めてゆっくりな。迎えの車が着ちまったみたいだ。おっちゃん、もう少し遊んできたって良いのにヨォ」
迎えの車って、あぁた随分なご出世ですねぇ、
「厭味か?買い出しにでた工場のおっちゃんが迂回して廻ってきてくれるだけだよぉ。ところによっちゃぁ まだ松の内だしさぁ。ウチなんかの、櫻が咲いてからの 短い夏の間に集約的に管理するコースは、寄り道とか 早お昼とか 早仕舞いとか。キーパーは今日もお出かけで留守にしてぇるし、段取りもゆるいし ...とかさ。この時期くらいは 連中も羽根伸ばさしてやンないとだろ。じゃぁ またな...」
―――― って、あぁたの我が儘につき合わせてるだけじゃないんですか? ...ってもね。まぁまぁ せめてこの時期くらいは あぁたものんびりして下さいな
A Golf Courase Maintenance Fable
Another Time Another Course
...From His Field Note 2018_01_12
そを人は 虚実の皮肉と云ふさうな...